子どものどもりが心配な親御さんへ|吃音の正しい知識

突然ですが、「吃音(きつおん)」という言葉を聞いたことはありますか?「どもり」なら知っているけれど、吃音とどう違うのかよくわからない、という方は意外と多いのではないでしょうか。

お子さんの話し方が気になりはじめた親御さん、あるいはご自身が人前で話すことに強い緊張を感じている方、もしくは職場や学校で吃音のある方と接する機会がある方。それぞれの立場から、この言葉に出会ったのかもしれません。

このページでは、吃音(どもり)について、医学的な定義から日常的な言葉との違いまで、できるだけわかりやすく整理してお伝えします。宝塚で15年以上、延べ3万人以上の方の施術に携わってきた経験をもとに、からだと神経のつながりという視点もあわせてお話しします。

院長:一色
院長:一色

「どもり」と「吃音」、同じようで実は大きな違いがあります。言葉の背景を知るだけで、向き合い方がガラッと変わることがあるんです

「吃音」と「どもり」は同じもの?それとも違う?

この疑問、実はとてもシンプルに答えられます。結論からいうと、吃音とどもりは指している状態としてはほぼ同じです。ただし、使われる場面や言葉に込められたニュアンスに大きな違いがあります。その違いを理解することが、吃音を正しく知るための出発点になります。

「どもり」という言葉の歴史的背景

「どもり」は古くから使われてきた日本語の俗語です。話し言葉として長い歴史を持ちますが、その一方で、からかいやいじめの言葉として使われてきた側面も否定できません。

「どもり」という言葉そのものに悪意がなくても、それを耳にした当事者が傷ついてきた歴史があります。そのため現在では、医療・教育・福祉の現場では「どもり」という表現は基本的に使われなくなりました。

「吃音」が正式名称として使われる理由

「吃音(きつおん)」は、医学・言語聴覚の分野で使われる正式な名称です。「吃」という漢字には「言葉につかえる」という意味があり、発話のリズムが乱れる状態を中立的に表しています。

正式な診断名としては「吃音症」や「小児期発症流暢障害」という名称が使われることもあります。いずれも同じ状態を指していますが、「吃音」という言葉を使うことで、当事者への偏見や誤解を避けながら正確に状態を伝えられるという点で、現在はこちらが標準的に使用されています。

吃音とはどんな状態か、具体的に見てみましょう

吃音は「話しにくさ」の一種ですが、その現れ方には大きく3つのパターンがあります。どれか一つだけが出る方もいれば、複数が組み合わさって現れる方もいます。自分や家族の状態を当てはめながら読んでみてください。

連発(れんぱつ)――音や言葉が繰り返される

「ぼ、ぼ、ぼくは」「き、き、きょうは」というように、最初の音や言葉が何度も繰り返されるタイプです。吃音の中でもっともよく知られた形で、幼児期に最初に現れることが多いとされています。

繰り返しの回数は状況によって変わり、緊張しているときや急いで話そうとしているときに出やすい傾向があります。

伸発(しんぱつ)――音が引き伸ばされる

「すーーーみません」「こーーーんにちは」のように、特定の音が不自然に長く引き伸ばされるタイプです。本人は次の言葉を出そうとしているのに、音が止まらない感覚があります。

聞いている側には「ゆっくり話しているだけ」に見えることもありますが、当事者にとっては強いもどかしさを感じる症状です。

難発(なんぱつ)――言葉が出てこない、詰まる

話し始めようとしても声が出ない、口が開いているのに言葉が出てこない状態です。「ブロック」と呼ばれることもあります。3つの中でもっとも本人のストレスが大きいタイプとされており、電話や初対面の挨拶など、特定の場面で強く出やすい特徴があります。

沈黙が続くため、相手に「何か考えているのかな」と誤解されやすく、それがまた緊張を高めるという悪循環につながることもあります。

吃音はいつ、なぜ起こるのか

吃音の原因については、長年にわたって研究が続けられています。かつては「育て方が悪い」「親が過干渉だから」などと言われた時代もありましたが、現在ではそれは完全に否定されています。吃音は親の育て方や子どもの性格の問題ではありません。

発達性吃音――幼児期に多く現れる

全体の約9割を占めるのが、2〜5歳ごろの幼児期に発症する「発達性吃音」です。言葉を覚え、表現しようとする力が爆発的に伸びる時期に、脳の言語処理と発話の動きがうまく噛み合わないことで起きると考えられています。

発達性吃音は、自然に回復するケースが全体の約7〜8割にのぼるとされています。ただし回復には個人差があり、就学後も続く場合は専門家への相談が勧められます。

獲得性吃音――大人になってから発症することも

脳梗塞や頭部外傷などの神経疾患をきっかけに、大人になってから突然吃音が現れる「神経原性吃音」もあります。また、強いストレスや心理的な衝撃が引き金となる「心因性吃音」というパターンも知られています。

大人になってから話しにくさを感じるようになったという方は、こちらのタイプに該当することがあります。身体的な原因が隠れている可能性もあるため、早めに医療機関に相談することをお勧めします。

吃音と自律神経の深い関係

ここからは、私が日々の施術を通じて実感していることをお伝えします。吃音の症状は、緊張すると強くなり、リラックスしているときは出にくくなることが多いです。これはなぜでしょうか。

緊張が症状を悪化させるメカニズム

人間は緊張すると交感神経が優位になります。心拍数が上がり、筋肉が緊張し、呼吸が浅くなります。発話は口・舌・喉・横隔膜など多くの筋肉の協調動作によって成り立っていますが、全身の筋肉が緊張状態にあると、この繊細な協調が乱れやすくなります

吃音のある方が「電話のときだけひどくなる」「初対面の人の前だと出やすい」とおっしゃるのは、まさに自律神経の緊張反応が発話に影響しているからだと考えられます。

自律神経を整えることが話しやすさにつながる

当院では、脳と神経のバランスを整えるアプローチを通じて、緊張しやすい体質そのものを改善することを目指しています。吃音そのものを直接「治す」というよりも、緊張しにくいからだの状態をつくることで、症状が出にくい環境を整えていくイメージです。

実際に来院された方の中にも、からだ全体の緊張がゆるんでいくにつれて、話しやすくなったとおっしゃる方がいらっしゃいます。吃音に悩んでいる方が「言語の問題だから整体は関係ない」と思い込んでいることは多いのですが、神経と筋肉のつながりという観点から、できることは意外とたくさんあるのです。

吃音がある子どもへの関わり方

お子さんの吃音が気になっている親御さんに向けて、日常の中で心がけていただきたいことをお伝えします。焦らせたり、急かしたりすることが症状を悪化させる場合があります。何よりも大切なのは、話すことが「安心できる経験」であり続けることです。

やってはいけないこと・やってあげたいこと

「ゆっくり話して」「もう一回言ってみて」という声かけは、子どもに「自分の話し方はおかしい」という意識を強める可能性があります。指摘や訂正は避け、最後まで穏やかに聞いてあげることが基本です。

また、兄弟や友達と比べたり、「なんでうまく話せないの」という言葉は厳禁です。吃音は意志の力でコントロールできるものではないため、本人が一番傷ついています。子どもが話し終わった後に「そうなんだね」と内容に反応してあげることが、何よりの安心感につながります。

専門家に相談するタイミングの目安

以下のような状況が続く場合は、言語聴覚士や小児科、発達支援センターへの相談を検討してください。

  • 症状が半年以上続いている、または悪化している
  • 子ども自身が話すことを怖がったり、避けたりしている
  • 学校や幼稚園で友達との関わりに影響が出ている
  • 顔や体に力みが見られるなど、二次的な症状が出ている

「様子を見ましょう」と言われ続けて時間が経ってしまうケースも少なくありません。迷ったら早めに動くことをお勧めします。

大人の吃音――一人で抱え込まないでほしい

大人になっても吃音が続いている方は、長年にわたってそれを隠しながら生活してこられた方も多いと思います。電話を避ける、自己紹介の場面が怖い、会議で発言できない。そうした経験を積み重ねながら、誰にも言えずにいる方も少なくありません。

吃音があることは、その人の知性や能力とはまったく無関係です。にもかかわらず、「また笑われるかもしれない」という恐れが、さらに緊張を生み、症状を悪化させるという悪循環に陥りやすい。これは本人の弱さではなく、神経系のしくみとして起きていることです。

大人の吃音に対しては、言語療法だけでなく、認知行動療法や自律神経へのアプローチなど、複数の角度からのサポートが有効とされています。一つの方法でうまくいかなかったからといって、諦める必要はありません。

吃音と向き合うために、まず「正しく知る」ことから

吃音とどもりの違い、吃音の3つのタイプ、原因、自律神経との関係、そして日常の関わり方。ここまで読んでいただいた方には、「吃音」という言葉の輪郭が少しクリアになってきたのではないでしょうか。

正しい知識は、正しい対応につながります。そして正しい対応が、当事者の方の毎日を少しずつ楽にしていきます。吃音は決して「性格の問題」でも「努力が足りない」わけでもありません。神経と体のバランスの問題として、しっかりと向き合っていくことができます。

もし今、ご自身やお子さんの吃音についてひとりで悩んでいるなら、ぜひ一度ご相談ください。当院では、からだ全体の緊張を整えるアプローチを通じて、話しやすいからだの状態づくりをお手伝いしています。宝塚という小さな治療院ですが、県外からも多くの方が来院されています。どんな小さな疑問でも、気軽に話しかけていただける場所でありたいと思っています。


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院長:一色
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最後までお読みくださりありがとうございました。