大人の吃音、一人で悩んでいませんか?知っておきたい基礎知識

「また今日も、最初の一言が出なかった。」そんなふうに感じて、そっと胸にしまい込んだことはありませんか。誰かに話したくても、うまく説明できなくて、結局一人で抱えてしまう。そういう方が、本当にたくさんいらっしゃいます。

このページでは、吃音(きつおん)について「これって病気なの?」というところから、正しく、やさしく、お伝えしていきます。知ることが、前に進む第一歩になりますから。

長年、自律神経とからだの関係を診てきた立場から、吃音に悩む方を数多く目にしてきました。「恥ずかしいこと」でも「弱いこと」でもありません。どうか、最後まで読んでみてください。

院長:一色
院長:一色

吃音で悩んでいる方は、本当に「一人で」抱えすぎています。これは性格の問題でも育ちの問題でもなく、からだと神経の問題です。正しく知ることで、必ず出口は見えてきます

吃音は「病気」なのか、それとも「障害」なのか

この問いに、はっきりした答えを出せないまま何年も過ごしてきた方が多いのではないでしょうか。「病気」と言い切るには、風邪や骨折とは違う気がする。でも「ただの癖」にしてしまうには、あまりにも日常生活への影響が大きい。そのあいまいさこそが、吃音を「一人で抱え込ませる」最大の原因だと私は思っています。

医学的な位置づけを整理すると

医学の世界では、吃音は「発話の流暢性が障害された状態」として定義されています。精神疾患の診断基準であるDSM-5という国際的な分類では、「小児期発症流暢症(吃音)」という名称で記載されています。

つまり、吃音は「気のせい」でも「努力が足りないせい」でもなく、れっきとした医学的な状態として認められているのです。「病気か否か」という二択で考えるより、「からだと脳の働きに関わる状態」と理解するのが、今の医学のスタンダードです。

「障害者手帳」の対象になることもある

成人になっても吃音が続き、日常生活や仕事に支障が出ている場合、音声機能障害として障害者手帳の申請ができるケースがあります。これは「あなたは障害者だ」とレッテルを貼るものではなく、必要なサポートを受けるための制度です。

知らなかったために、使えるはずの支援を受けられていない方も少なくありません。まずは「そういう選択肢もある」と知っておくだけでいいのです。

吃音の症状、あなたはどのタイプ?

吃音といっても、その現れ方には大きく分けて3つのパターンがあります。自分の状態を言葉にできると、専門家への相談もぐっとスムーズになりますので、ぜひ確認してみてください。どれかひとつだけに当てはまる方もいれば、複数が混在している方もいます。

連発(れんぱつ)

「あ、あ、あのー」というように、最初の音やひとつの音節を何度も繰り返してしまうタイプです。本人は繰り返したくて繰り返しているわけではなく、次の言葉へのブレーキが外せない状態です。子どもの吃音に多く見られますが、大人になっても続くことがあります。

伸発(しんぱつ)

「あーーのですね」というように、特定の音を不自然に引き伸ばしてしまうタイプです。本人には「引っかかっている感覚」があり、話すたびに緊張が高まりやすいのが特徴です。

難発(なんぱつ)

言葉が詰まって、最初の一音すら出てこない状態を難発と言います。「ブロック」とも呼ばれ、とくに電話や自己紹介など、特定の場面で強く現れることがほとんどです。見た目には口が動かないだけに見えても、本人の内側では強烈な苦しさが起きています。

なぜ吃音は起きるのか|原因を知ることが安心への近道

「なぜ自分だけ?」「何がいけなかったの?」と、原因を自分に求めてしまう方がとても多いです。でも、吃音の原因についての研究は長年積み重ねられており、今では「個人の性格や意志の弱さとは関係ない」ということがはっきりしています。

脳の処理と発話のタイミングのずれ

吃音のある方の脳を調べると、言語を処理する部位の活動パターンが、そうでない方と異なっていることが確認されています。話すという行為は、脳から筋肉への命令が複雑に連動して初めて成り立ちます。その連動に少しタイムラグが生じることで、言葉が詰まったり繰り返したりする現象が起きるのです。

遺伝的な要因もある

吃音は、家族内に同じ症状を持つ方がいる割合が高いことも報告されています。育て方や家庭環境が原因で起きるわけではないということは、親御さんにとっても、ご本人にとっても、ぜひ知っておいてほしい事実です。

自律神経との深い関係

緊張した場面、たとえば電話・面接・初対面の人との会話で症状が強く出るという経験をお持ちの方は多いと思います。これは、緊張・不安・プレッシャーによって自律神経のバランスが乱れ、発話のコントロールがさらに難しくなるためです。

吃音そのものに自律神経が直接関わっているわけではありませんが、「吃音への恐怖と緊張」が自律神経を過剰に反応させ、症状を悪化させるという悪循環が生まれやすいのです。私が施術の中で自律神経の調整を重視するのも、このような背景があります。

吃音は何歳で始まり、自然に治ることはあるのか

「そのうち治るだろう」と待ち続けているご家族や、「もう何十年も経つから諦めている」という大人の当事者、両方のお話を聞いてきました。正しい見通しを持つことが、焦りや諦めを手放すきっかけになります。

多くは幼児期に始まる

吃音は、2歳から5歳ごろの言葉が急激に発達する時期に始まることがほとんどです。この時期の発症は決して珍しくなく、子ども全体のおよそ5〜8パーセントに見られると言われています。

自然に治るケースと続くケース

幼児期に始まった吃音の7〜8割は、思春期までに自然に症状が落ち着くと言われています。ただし、残りの方は大人になっても吃音が続きます。男性は女性よりも続きやすい傾向があり、成人の吃音者は男性が多数を占めています。

「まだ治るかもしれない」と様子を見ることも大切ですが、日常生活や仕事に支障が出ているなら、早めに専門家に相談することをおすすめします。待つだけでは、状況が好転しないケースも多いからです。

大人になってからの吃音|仕事や人間関係への影響

「電話が怖くて仕事に行けない」「自分の名前を言うときが一番つらい」「会議で発言するたびに冷や汗が出る」。こういったお声を、治療院でも本当によく聞きます。吃音は、日常の些細な場面で何度も何度も、当事者を苦しめます。

二次的な問題が生まれやすい

吃音の症状そのものよりも、それによって生まれる「話すことへの恐怖」「人の目への過敏さ」「回避行動」のほうが、生活の質を大きく下げてしまうことがあります。こうした状態が続くと、社交不安障害やうつ状態に発展することもあります。

吃音を「たかが言葉のつっかえ」と軽く見てはいけない理由が、ここにあります。からだだけでなく、心への影響も真剣に考える必要があります。

吃音があっても活躍している人はたくさんいる

著名な政治家や俳優、スポーツ選手にも、吃音と向き合いながら活躍してきた方は世界中にいます。吃音があることが「できない理由」にはならない。ただ、そのためには適切な知識とサポートが必要です。一人で「何とかしなければ」と踏ん張り続けるより、助けを借りながら進む方がずっと楽に、そして確実に前進できます。

相談できる場所と選択肢を知っておこう

「どこに行けばいいかわからない」というのも、吃音を抱え込ませる大きな理由のひとつです。受診・相談の選択肢を知っておくだけで、気持ちがずいぶん楽になります。

言語聴覚士(ST)への相談

吃音の専門的なリハビリを行うのが言語聴覚士です。発話のパターンを整えるトレーニングや、話すことへの不安を和らげる認知的なアプローチを行います。病院や療育センターに在籍していることが多く、子どもから大人まで対応しています。

耳鼻咽喉科・心療内科・精神科

まず医療機関への受診を考えているなら、耳鼻咽喉科か心療内科が入り口として選ばれることが多いです。医師による診断を受けることで、自分の状態が整理され、次のステップが見えやすくなります。

自律神経へのアプローチという選択肢

吃音と自律神経の関係については先ほどもお伝えしました。緊張・不安・恐怖が症状を悪化させるのであれば、からだの内側から自律神経を整えていくアプローチは、吃音と向き合ううえでの大切な土台になります。薬や言語訓練だけでなく、からだ全体の状態を整えるという視点を持つことで、変化を感じやすくなる方もいらっしゃいます。

子どもの吃音|親としてできること

お子さんの言葉のつっかえに気づいた親御さんが、「自分の育て方が悪かったのでは」と自分を責めていることは珍しくありません。でも、繰り返しになりますが、吃音は育て方が原因ではありません。まずそこだけは、はっきりお伝えしたいのです。

子どもの前で「どもらないで」と言わない

親心から「ゆっくり言ってごらん」「落ち着いて」と声をかけたくなりますが、これが子どもに「自分の話し方はおかしい」という意識を植えつけ、症状を悪化させることがあります。話の内容に興味を持って聞く、目を合わせてうなずく、それだけで子どもの話しやすさは変わります。

焦らず、でも放置せず

発症から1年以内は自然回復の可能性も十分ありますが、小学校に上がっても続いている場合や、本人がつらそうにしている場合は、早めに専門家への相談を検討してください。「様子を見る」と「放置する」は違います。

一人で抱え込まないために、まず知識を持つ

吃音について正しく知ることは、「自分を責めることをやめる」第一歩です。病気か障害かという言葉の分類より大切なのは、「これはちゃんとした理由があって起きていること」「対処できる方法がある」という事実を、あなた自身が受け取ることではないでしょうか。

「どうせ治らない」と諦めてしまう前に、できることはたくさんあります。からだを整え、自律神経を落ち着かせ、話すことへの恐怖を少しずつほぐしていく。そういう積み重ねが、確実に日々の暮らしを変えていきます。

私自身、長年腰痛で苦しんだ経験があります。あの頃、一人で抱え込んでいた時間が一番つらかった。誰かに話を聞いてもらい、正しい方向を示してもらったときの「やっとわかった」という安堵感は、今でも忘れられません。吃音で悩む方にも、同じような安堵を感じてほしいと心から思っています。

どんな些細なことでも、気になることがあればいつでも相談してください。一人で悩み続ける必要はありません。


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院長:一色
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